住友林業の現場調査

愛知県 H様邸

調査日:2020年9月〜12月

【エンジニアリングレポート】

調査結果まとめ

  • 上棟工事は基本的事項が守られており施工、管理状況ともに良好であった
  • 本件は準耐火建築物であったが、火災時の耐火性能を満たせない施工状況が内外部ともにあり、性能担保への意識不足が否めない
  • 是正は指摘後、修正され問題なく引渡しが遂行された
住友林業、愛知県H様邸の現場調査レポートです。木造軸組工法の大手ハウスメーカーらしく大工の施工状況は良好。社内マニュアルもしっかりと整備されており、一定の安心感がある。一方で、大工以外の工事のうち、特に「基礎工事」と「防水工事」に指摘が多いのは本メーカーの特徴といっていいだろう。

基礎配筋検査レポート

耐圧版(地面に接する底版)に鉄筋を2段重ねで組んでいく、べた基礎ダブル配筋仕様の現場である。べた基礎配筋には「シングル」と「ダブル」という2種類の配筋方法があり、一般的にはシングル配筋が多い。ダブル配筋組は、使う鉄筋の量が多くなり指摘が増える傾向にある。

2枚の写真は、鉄筋と地面の捨てコンが近く、いわゆる「かぶり厚さ」が確保できていない指摘。鉄は水に弱くさびやすい材料の為、このような個所では規定通りの寸法確保が必須となる。特にダブル配筋は鉄筋が多く、重量も増えるため下側のかぶり厚不足が多く散見される。
 
次の写真は防湿シートの破れが未補修の様子。住友林業の場合には「シロアリ対策」でもあるので、きちんとした補修が必要だ。

基礎完成検査レポート

コンクリートが硬化し、基礎が完成した段階での検査を実施した。設計図書通りの寸法が確保できているか?が、主な確認事項になる。
コンクリートの仕上がり状況は良好。現場清掃も含めて指摘はほとんどなかった。
写真は基礎天端(基礎の上側)に浮きがないかを道具を使って検査している様子。
 

上棟検査レポート

基本的な施工ができており、施工状況は良好といっていい。
現場の清掃や保全状態も写真をみてお分かりになる通り。建築現場は3S(整理・整頓・清掃)が基本だが、厳しいことを言えば「注意すればだれでもできる作業」が片付けであり、当たり前項目だ。3Sの行き届いた現場であれば品質に問題がないとは言えないが、その逆「現場が汚い、3Sされていない状況」であった場合には、どの建築現場でも品質が悪いと言えるだろう。
 
指摘は含水率超過。建て方時(柱や梁の組み立て)に雨に濡れないように配慮したつもりでも、やはり雨に濡れて含水率は高くなってしまう。
日本農林規格で定められている含水率を下回るのを確認できなければ乾燥して適切な状況まで待つしかない。
 

防水検査レポート

防水紙は社名入りの透湿防水シートを標準採用している。材料が紙のように薄く、水は通さず通気ができる材料特徴だが、その名の通り破れやすいので、取り扱いに注意が必要な代物である。
これまでに実施した、住友林業のインスペクションでは基礎工事に次いで、指摘の数が多い傾向にある。破損以外では、貫通部の処理に注意したい。
貫通部の配管周りに防水材を施工していない箇所(施工忘れ)があったため指摘した。

また写真はパイプを固定しているビスを問題視しているものである。ビスがパイプの下側に打ち込まれているのがわかるが、万が一雨水が侵入した際には、構造躯体に雨が浸水しやすい箇所に穴をあけるのは配慮不足は否めない。
 

断熱検査レポート

充填工法である壁の断熱材の施工状況は良好であった。断熱工事品質は職人のモラルとスキルに直結するといっても過言ではなく、現場によって「良い・悪い」の差が出やすい工程の一つである。
赤外線カメラを使用した断熱検査でも指摘はなく、充填式断熱工法のお手本のような施工状況であった。
 

内部造作完了検査レポート

石膏ボードの留め具(ビス)の施工を確認した写真である。
ビックフレームは大きな柱を使う工法で、その個所はビス打ち間隔が半分(一般部は150mm以下、BF柱部分は75mm以下:2020年時点)になる。
ビスの打ち忘れが多い現場で、指摘数は結構な箇所となった。昔ながらの工法(軸組工法、在来工法)は、いわゆる大工さんを棟梁と呼び、棟梁が現場を仕切っていく。言い換えると大工さんにお任せな現場監督がいまだに一定数いるのが現実で、社内検査をしっかり行えていない状態のようだ。
特に、本件は「準耐火建築物仕様」となっており、石膏ボードのビス打ち規定が細かく決められているが、1階の天井石膏ボードのビス打ちがすべて不足状態であった。
規定本数を増し打ちするように是正指示を行い、次写真のように多くのビスを追加で打つことになった。(追加といっても、次の是正写真が本来正しい施工状況である)
軸組工法の住友林業は「大工のスキルとモラル」、現場監督の「徹底した管理」が、特に品質確保の肝と言えそうだ。

【H様邸基本情報】

建設地 愛知県
工法 木造・ビックフレーム(型式認定工法)
延べ面積 180〜185㎡
階層 3階
契約時見積 該当データなし
最終見積 6500〜7000万円

現場調査したハウスメーカーの解説動画

住友林業の現場調査

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